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Jast a Traveler

アルジャーノンに花束を。

            

 

昨夕、静かに読み終えた。

心が動揺しないように、静かに。

 

この本は人から渡されたもので、タイトルは知っていたけれども内容は全く無知だった。

 

確か80年代の終わり頃、あるアーティストが出したアルバムのタイトルがこのタイトルと同じアルジャーノンという名前を使っていて、そちらの方のイメージが強く恋愛ものなのかなと勘違いをしていた。

 

なのでまさかこんな内容だとは思ってもいなくて、正直少しだけ慄いてしまった。

 

これは知的障害を持つ青年の物語だ。

 

そう、これは物語。

 

うっかり引き込まれそうになってしまうけれど、これを読んでいると物語だということを何度も忘れてしまうハメになる。

 

彼は手術を受けることでIQが3倍にまで高くなり、人が人生をかけても到達することが困難な知識をほんの数ヶ月で習得してしまう。

 

その頭脳は手術をしてくれた博士達をも超えてしまうことになり、信頼関係をも崩れることとなる。今まで世話になったパン屋の仕事も解雇される。

 

頭が良くなった彼を襲ったのは孤独だ。

 

高頭脳ではあるが、精神面に関しては知的障害の頃のままだった。成長した脳に追いつかない純粋な心が、さらに彼を追い詰めてしまう。

 

しかしながら彼は、先に手術を受けたアルジャーノンの行動によって自分の運命を知ることになり、自分がなすべきことを自覚する。

 

この本は日記形式で書かれてあり、文体の様子から彼の能力の変化を感じとることが出来るのも特徴だ。

 

最後の展開は早い時期に予測可能ではあるが、その事実を読者(私)が引き止めたくなる、出来るだけ先延ばしにしたいと思う心境は、彼の最後の焦りや展開と似たものなのかもしれない。

 

最初に「昨夕静かに読み終えた」と書いたのは、静かに諦めた、自分の心が大きく動揺しないように覚悟をした、という意味合いが強い。心をあえて鈍感にすることで衝撃を抑えようとしたのである。

 

どうかアルジャーノンに花を添え続けてくれる人がいてくれますように。

 

 

アルジャーノンに花束を〔新版〕(ハヤカワ文庫NV)